エバーアフター

エバーアフター

祥伝社 2014.11.30 (ボーイズDuO セレクション) ISBN978-4-396-70021-8
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「あなたの手はどうしてこんなに温かいの? ねぇ、あなたのここは、どうしてこんなに…」 (『赤ずきん』より) シンデレラ、人魚姫、赤ずきん、かぐや姫―― 誰もが知るあの寓話を、 ストリーテラー・えすとえむが、 新作描き下ろし『美女と野獣』を含む独自の解釈によって描き上げた傑作BL短編集。

■初出誌:
「シンデレラ Cinderella」(18p)…『ケータイ★マンガ王国 ボーイズDUO』vol.9 2009.11(初出時「SM仮面舞踏会」のサブタイトル付)
「赤ずきん Little Red Riding Hood」(17p)…『ケータイ★マンガ王国 ボーイズDUO』vol.10 2009.12(初出時のタイトル「オオカミ×肉食赤ずきん」)
「人魚姫 The Little Mermaid」(35p)…『ケータイ★マンガ王国 ボーイズDUO』vol.13~14 2010.3~4(初出時のタイトル「人魚の誘惑」)
「美女と野獣 Beauty and the Beast -new work-」(18p)…描き下ろし
「かぐや姫 The bamboo prices」(33p)…『ケータイ★マンガ王国 ボーイズDUO』vol.16 2010.6
「カルメン Carmen」(28p)…『BE・BOY GOLD』2008年10月号

この作品は2009年11月~2010年6月にわたって、「ケータイ★マンガ王国」という携帯電話専用サイトで「BLおとぎ話―エバーアフター」というタイトルで配信されたものです。PCの方では「COMIC SHOWTIME」というサイトで配信されていました。『ボーイズDuO』は“ケータイ発オリジナルBLマガジン”というキャッチで登場した携帯電話サイト用の雑誌でしたが、おそらく2009年~2011年頃に配信されていたと思われます。その後は単行本のシリーズ名として「ボーイズDuOセレクション」というタイトルで残っています。

よって、本作は紙媒体として出版されるのは初めてのことです。日本と西洋のおとぎ話をベースにしたBLです。配信時に読んでいましたが、なかなか単行本にならず、これだけでは1冊には足りないなと思っていました。「美女と野獣」という描き下ろし作品に加え、単行本未収録作品の一つ「カルメン」を入れてくれました。

「シンデレラ」
BLおとぎ話―エバーアフター本書のタイトルである「エバーアフター」は昔話のラストに出てくるお約束「末永く幸せに暮らしました。」の“末永く”の意味です。「エバー・アフター」というシンデレラを脚色した映画もありました。「シンデレラ」のお話が一番もとのお話に近いでしょうか。物語のキーになるのが“靴”というのも、えすとえむ先生の得意なジャンルでしょう。ここに登場する、「プリンス・アルバート」はボディ・ピアスの一種です。どんなボディ・ピアスかは想像するか、検索してみて下さい。

「赤ずきん」
この作品はPCで配信するときくらい、カラーで見たかったような気もします。頭巾というか、パーカーですが、このベタを赤と思って読めばいいですね。この物語のルーツは非常に古いものなので、興味のある方は「グリム童話―メルヘンの深層」を読むと良いと思います。私自身はグリム童話の、猟師がオオカミのお腹の中から赤ずきんとおばあさんを助けるバージョンから入っています。この作品では、男はオオカミで、弁護士が猟師ですね。グリム童話の残酷性と猥雑性から鑑みると、この現代のエロティックなお話もまんざら遠くはないのではないでしょうか。

「人魚姫」
デンマークのアンデルセンの創作童話で、悲劇として知られる作品ですが、ここではハッピーエンドにしてくれました。「姫」ではなく男で、環境破壊をちょっとだけテーマにした作品に仕上げてくれました。

「美女と野獣」
グリム童話なのですが、童話より映画やバレエの方で知られる作品を描き下ろしで追加してくれました。ずいぶんと絵柄が変わって見えますが、このタッチの作品もありますから、原稿を描いた時期によるものではなく、使用しているペンの問題とおそらくは締め切りまでの時間の問題かと思われます。編集者と小説家が美女と野獣になり、姫はイケメンより野獣が好きというお話です。「玉稿をたまわれますこと、まことに…」という台詞に笑いました。

「かぐや姫」
日本の昔話も取り上げてくれました。でも舞台はパリ。えすとえむ先生の描くパリの夜景は美しい。ピュアなお話で、これが一番好きです。

「カルメン」
カルメン“エバーアフター”とは別に2008年に発表して単行本には収録されたことがなかった短編を付け加えてくれました。この作品はとても素晴らしい作品でしたので嬉しいです。
ホセと闘牛士が恋人同士だったら、という設定の物語で、2007年に出した同人誌「カルメン」に加筆修正したものです。軍人ホセが嫉妬に狂ってカルメンという女を殺すのは同じですが、嫉妬の意味が違います。闘牛士の名前はビゼーのオペラはエスカミーリョでしたが、メリメの小説ではリュカスでした。私もリュカスの方がいいと思います。

童話ではありませんが、この作品も古典の独自解釈で描かれたBL、ということで収められたのだと思います。