IPPO 1

IPPO 1

集英社 2012.12.10 ISBN978-4-08-879494-5(ヤングジャンプコミックス YJCジャンプ改)

受け継がれる匠の技。挑む若き挑戦者の名は「歩」。

「一足30万から」。一条歩、職業・靴職人。12歳でフィレンツェに渡り、17歳から名門下の靴職人として働いた青年は、22歳の今年、東京にひっそりと店を構えた。
その名は“IPPO”。極上を知る青年の店には、上客、珍客、美しい客……とさまざまな客が訪れる。腕は確か、されど若造。そんな職人の手仕事ストーリー。


■初出誌
Episodio.0(32p)…「ガールズジャンプ2012」 2012.1.27
Episodio.1(32p)…「ジャンプ改」2012年3月号 2012.2.10
Episodio.2(30p)…「〃」2012年5月号 2012.4.10
Episodio.3(28p)…「〃」2012年7月号 2012.6.8
Episodio.4(28p)…「〃」2012年9月号 2012.8.10
Episodio.5(28p)…「〃」2012年11月号 2012.10.10

一条歩はイタリア人の祖父と日本人の祖母をもつクオーター。祖父のフィリッポ・ジェルリーニは注文靴(ピスポーク)の靴職人で、彼の店の工房を見て育った。祖父は祖母が死んだときに店をたたんでイタリアに帰ったが、歩は12歳のときに父母が離婚したことをきっかけに祖父を追ってイタリアに渡り、17歳から5年間、祖父の工房で靴職人として修行を積む。そして22歳になって日本に帰国。以前祖父が営んでいた店をたたき壊し、同じ場所に自分の店を開く。店の名前は「IPPO」。靴のフルオーダーメイドという日本ではまだ珍しい店で一足30万円からという高価なものだが、くせの強い、あるいは事情のある客が少しずつ来店し始める…。

靴が好きで好きでたまらない。出来上がった靴の感じだけでなく、そのつくる過程もすべていとおしい、そんな作者の「靴フェチ」ぶりが存分に発揮された本作。ていねいな取材に基づく作品づくりのおかげで靴をつくる過程だけでなく、修理のやり方、日本及びイタリアにおける注文靴の需要についてなど一通りのことを学ぶことができます。

作品の冒頭、小さい歩の初めの一歩を描いた絵に感動しました。初めて歩みを始めるその足の柔らかさ、身体のバランスの悪さ、それを見ている視線の優しさが、なんとも胸をつく一枚の絵になっていて、圧倒されました。これは連載誌のカラーで載せて欲しかった。表紙のカラーイラストも素晴らしく美しい。こういう絵の圧倒的な表現力に私は強く惹かれます。

歩の気骨あふれるチャレンジ精神とていねいな仕事ぶりが作者の職人気質にも通じていて、背筋が伸びる思いがします。と同時に、読んでいてとても暖かい気持ちになれる作品です。

話の本筋から少し離れますが、はとこのファビオ・ジェルリーニが登場することで、ジェルリーニというブランドの規模が少し見えてきます。フィレンツェに本店があり、ミラノに支店がある。祖父の兄、アレッサンドロの孫である彼が経営に携わっているので、この工房が一族による経営であることがわかります。イタリアでは一般的なことでしょう。それなりに大きなブランドであることが想像できます。

フィリッポ・ジェルリーニは日本に来日する前にすでに兄のアレッサンドロとともに工房を開いていると書かれています。彼はこの兄とつくったブランドをそのままもってきて日本で店を構えましたが、その時期がいつなのかわかりません。つまり、フィリッポ・ジェルリーニはどのくらいの期間日本にいたのでしょうか?普通に考えると祖母と結婚したときですから、相当前です。30年~40年経過していてもおかしくありません。その期間ずっとアレッサンドロはイタリアで職人をかかえて店を構えいたのでしょうか?あるいはまたフィリッポが結婚して、娘か息子が生まれてもしばらくはイタリアにいて、どこかのタイミングで日本に来たのでしょうか?

また、祖母が死んでフィリッポがイタリアに帰ったのはいつなのか、という時期が具体的に書かれておらずわかりません。祖母の葬式のときの歩の服装は制服のように見えるのですが、それですと中学生になってしまいます。12歳で祖父を頼ってイタリアに渡るので、歩が小学生高学年のうちだとは思いますが、よくわからないのです。

ここら辺の時間の経過が見えないと、ジェルリーニというブランドがどういう価値をもつものかが把握しづらい。フィリッポが日本に帰国してから少なくとも10年以上経過するわけですから、その期間に細々とアレッサンドロが続けていた店が手広く展開した可能性もあります。いろいろと考えてしまうときりがない…。

この辺のことが今後の連載で少しわかると、私としては話に入って行きやすいです。

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