うどんの女(ひと)

うどんの女

祥伝社 2011.9.15 (FEEL COMICS) ISBN978-4-396-76531-6
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「好きです」……うどんが。
バツイチ出戻りの村田チカ(35)の仕事は学食の「うどんのおばちゃん」。
連日、うどんオンリーの男子学生・木野(21)と目が合うようになり──。
ビンボーなの? うどんが好きなの? それとも私のこと……!?
年上女と草食男子の、じれったいほどの年の差ラブコメディ。


■初出誌:「FEEL YOUNG」
94円(24p)…2010年7月号
0.5杯目(8p)…2010年10月号
1杯目(24p)…2011年1月号
2杯目(24p)…「2011年2月号
3杯目(24p)…2011年3月号
4杯目(24p)…2011年4月号
5杯目(24p)…2011年5月号
最終杯(26p)…2011年6月号
描き下ろし(3p)

美大の学食でうどんを作っている村田チカは35歳バツイチ出戻り。学生に「おばちゃん」と呼ばれるが、まだまだイケてるつもりだ。そんな彼女の元へ毎日うどんを食べに来る油絵科の学生・木野は頼んでもない具をうどんにのせてくれるチカが気になっている。チカの方でも食べ盛りの年齢なのに毎日うどんを頼む木野のことが気になる。お互いに相手が自分を気にしているような気がしているようだ。年の差のせいもあって、なかなか近づけない二人だったが…。

「94円」という短編が「FEEL YOUNG」に掲載されたとき、ものすごく面白いなと思った。多分それはあの“妄想合戦”のせいだと思う。直後「0.5杯目」という作品が出て、連載化されるのかなと思っていたら、するっと連作が始まった。トーンは特別変わらないのに、「94円」の時に比べるとぐっとテンポが落ちた感じがした。

村田さんが何者かわからないことがポイントなのに、田中先生が登場することによって正体が明かされていくと、ちょっとつまらなくなっていく気がした。あのまま「94円」だけでいれば良かったのにとも思った。連載を読んでいたのだが、次第にわくわく感が失われていくような気がしていた。

しかし、単行本としてまとめて読んでみると、あらためて面白い。最初に面白いと感じた、二人の妄想合戦はちゃんと続いていたし、テンポが落ちたと感じていたのは、連載による間延びのようだ。すっきりまとまっていて、良い作品に仕上がっていると思う。「うどん」というモチーフがいいのかもしれない。暖かく、艶めかしく、シンプルで、おいしい。

年の差や立場がある設定で、それなりに障害があって、ストレートに話が進まない。こういう恋愛の初期にある、お互いの気持ちをはかりかねた状態の時の物語が自分はあまり好きではない。お互いあれこれ深読みしている話には特にイライラさせられる。もともと恋愛がメインの作品を好まないところもあるが、単に気が短いのだろう。それに、それまでの妄想は単なる取り越し苦労か、と思わせるエンディングの物語が多いせいもあり、徒労感が隠せない。

だが、この二人の妄想は単純明快で悪くない。それに、妄想を絵に描くことで具現化し、最終的にはそれを本人に提示して告白するという手法はカタルシスがある。それまでの間の妄想が無駄にならないというか、効率の良さを感じてしまう。あまりに妄想が強く作品はどうもストレスがたまる一方であまり好きではないが、この作品はリアルと妄想の距離感が良いと思う。

ここに装丁に関するブログ記事がある。
WORKS_comic 『うどんの女』―NARTI;S blog―
キャンバス日誌、『うどんの女』えすとえむさん編。―NARTI;S blog―

この単行本が刊行された後、番外編として「うどんの女 番外編」が『FEEL YOUNG』に掲載されている。