ハッピーエンドアパートメント

ハッピーエンドアパートメント

リブレ出版 2011.8.12 (シトロンコミックス) ISBN978-4-86263-978-3
imageBL度低

同棲相手に新しい恋人ができて追い出されたルカ。入居者募集の張り紙を見つけ、電話で問い合わせて行ってみると実は部屋は空いていないという。しかも大家のハビが「僕と一緒に住まないか?」と誘ってきた。家賃無しで光熱費のみ折半、ネットは使い放題…。
超不審だが、なぜか懇願するハビの瞳に流され同居することに決める。小説家志望のルカは出版社に<ハッピーエンド>を書けと要求されるが自分がしあわせじゃないのに書けるわけがない。しかしハビに、アパートの住人たちを主人公に書いてみたら?とすすめられる。
このアパートは<幸せ通り>のつきあたりに有り、<ハッピーエンドアパートメント>と呼ばれている…。ルカは住人たちの観察を始めた。
ルカとハビと、アパートの住人たちのハッピーエンド・オムニバス・ストーリー。

■初出誌:「Citron」
PROLOGUE(16p)…VOL.1 2010.3.1
chapter 1 ディノとサルバドール (24p)…VOL.2 2010.4.30
EXTRA ハビとルカ (8p)…VOL.4 2010.9.1
chapter 2 ノエと双子 (24p)…VOL.5 2010.11.1
chapter 3 マティアスとペペ (24p)…VOL.6 2011.1.5
chapter 4 ホセとエヴァ (24p)…VOL.7 2011.3.1
chapter 5 ハビとルカそしてルカ (32p)…VOL.9 2011.7.1
Anoter Prologue (6p)…描き下ろし
あとがき(1p)

BL専門のリブレ出版が2010年に創刊した隔月刊誌『シトロン』という雑誌の創刊号から1年半にわたり連載された連作オムニバス作品です。

“Calle Feliz”「カジェ フェリス」(幸せ通り)のつきあたりにあるから”Final Feliz ( Happy End )”という通称をもつアパートメントが舞台。小説家志望で本屋の店員をしているルカは恋人に部屋から追い出される。見つけたアパートに行ってみると、部屋は空く予定だったが空かなくなったという。ところが、大家のハビはルカに「家賃はなし、光熱費折半、ネット使いたい放題」で一緒に住もうという。最初は裏があるのではと怪しんだルカだったが、ハビの懇願に折れる形で(あと金欠だったので)、一緒に暮らすことにした。がベッドは別。

地元のFM局でDJをしているハビの部屋には何でもワンセットあり、誰かが一緒に暮らしていたことがすぐにわかった。ルカは小説を書こうとしているが、出版社に「ハッピーエンドを書いてこい」と言われ、自分がハッピーでないのに書けないと悩む。ハビはルカにこのアパートの住民を観察して、ハッピーエンドの物語を仕立てれば良いと言われる。ルカは住民を観察しようとするが…。

BL出身、スペイン好きの作者の本領発揮というべき一冊。日本画を学んだ経験をもつ作者だが、アメコミ風というかバンドネシネ風というか、ともかく日本の漫画の絵とは一線を画した画力がある。初期作品が海外(スペイン)を舞台にした、海外向けに書かれたと言ってもおかしくない内容で、実際に京都精華大学時代の恩師・マット・ソーン氏により翻訳されている。そういったバックエンドをあらためて語ったのは、本当にこの人は外国人が外国人に見える日本ではNo.1の作家だと感じたからだ。

連作オムニバスなので、住民たちのお話が短編の一つとして独立している。一つ一つがていねいなストーリーばかりだが、やはり根幹をなすハビとルカの話が一番良い。特に本を途中で読むのをやめてしまうくせのあるルカのくせが気になる。

漫画世界で使われるモチーフがいろいろと登場する。サルバドールは裸人だ。裸人はヤマシタトモコ「ドントクライ、ガール」(2010.7)とどちらの初出が先なのかわからないほど同時期だ。双子は萩尾望都っぽいし、最近人形師(フィギュア作家)を主人公にした作品も頻繁に見かけるようになった。

ところで、エヴァの名前の横に「(本当はエヴァン、念のため)」と書いてあるのは、エヴァが一見女性に見えるからだろう。エヴァの部屋にこっそり住む住民たちは元サーカスの団員でどうやら黒人が多いようなので、アフリカ系の移民なのかなと思ったり。この中に小さい女の子が混じっているが、この子以外は登場人物はすべて男性だ。

表紙のデザインがかなりカッコいい。本、漫画を問わず、装丁デザイナーの名前を奥付に入れて欲しいと常々思っている。