はたらけ、ケンタウロス

はたらけ、ケンタウロス

リブレ出版 2011.4.10(ゼロコミックス) ISBN978-4-86263-950-9
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【ケンタウロスと友好的な関係を築くための注意】
(1)「馬臭い」と蔑むこと。人間のイジメも「お前臭い」の一言から始まります。
(2)お尻や股間をジロジロ見ること。丸出しですが好きで出しているのではありません。
(3)ラッシュの電車の中で「オマエは走れよ!」と言うこと。公共機関は仲良く使いましょう。
(4)馬刺しを食べるケンタウロスを見て「共食い!?」と騒ぐこと。彼らは厳密には馬ではありません。
(5)競走馬で調子のいい馬を聞き出そうとしないこと。彼らにアタリ馬券はわかりません。
ケンタウロスは下半身はあれですが馬ではありません。

■初出誌
健太郎 1(16p)…「クロフネZERO」2010 Summer 2010.5.28
健太郎 2(16p)…「クロフネZERO」2010 Autumn 2010.8.28
健太郎 3(16p)…「クロフネZERO」2010 Winter 2010.11.27
健太郎 4(16p)…「クロフネZERO」2011 Spring 2011.2.28
ソバ職人見習い(24p)…「BE・BOY GOLD」2010年10月号 2010.8.28
靴職人(24p)…「BE・BOY GOLD」2010年12月号 2010.10.28
モデル(24p)…「BE・BOY GOLD」2011年2月号 2010.12.28
ニート志望(16p)…「BE・BOY GOLD」2011年4月号 2011.2.28
描き下ろし(4p)
あとがき(1p)
※雑誌掲載中はすべて「GALLOP!」というタイトルだった。

ケンタウロスがものすごく好きらしい作者のケンタウロス・コミカルバージョンと言うべき作品。同じくケンタウロスをテーマにした「equus」と対をなしている。BLのリブレ出版だが、雰囲気だけのBLで、BLシーンはないので、読みやすいと思う。

ケンタウロスはギリシャ神話に登場する下半身が馬、上半身が人間の生き物。彼等が人間社会にとけ込んで暮らしている様子が「健太郎」というごく普通のサラリーマンのケンタウロスを通して描かれている。ケンタウロスたちの就職事情や住宅事情、病気になったらどうなるの?といったリアルな有様やお酒は立ち飲み屋でしか飲めず、セクハラに合うこともあり、馬扱いされて憤ったりすることもある。人間社会における様々な摩擦というほどのことはない出来事がコミカルなタッチで語られる。伝説の生き物らしく、人間よりずっと長生きなのだが、そのことが引き起こすちょっとしんみりとしたエピソードもあったりする。

一方で伝説の生き物らしく、いろいろとぼかしていることもある。トイレ事情や上手に隠している下半身や何故か男性しかいない種族らしいのでどうやって繁殖してるのかなどなど。その辺は突っ込まないのがお約束。

優しい会社の先輩に普通にしごかれていたり、風邪をひいてお見舞いに来てもらったり、尊敬できる取引先の年配の男性と出会ったり、様々な人間との一種の異文化コミュニケーションが優しい感じで展開されていて、読んでいて楽しい一方ちょっとホロっとさせられて、なんとも言えないいい味が出ている。登場している人間もケンタウロスもみんなマジメで人がいいのが良い。

健太郎は馬具メーカーの営業というケンタウロスとしては非常に適した会社に就職したサラリーマンだが、後半はまた別の職業のケンタウロスたちが登場する。そば職人になりたいのに厨房に入れないから出前だけのケンタウロス。靴を履けないのに靴をつくりたいケンタウロス。CGで合成するからと、上半身だけ使われるのに疲れたトップモデルのケンタウロス。人間社会で何をして働けばいいのかわからない学生ケンタウロス。

いろいろな職業でそれぞれのケンタウロスが悩んだり考えたり、希望をもったりして、とてもいいストーリーだ。
漫画を息抜きに読みたいとき、こういうお話が一番いいと思う。